新型コロナウイルスの世界規模での大流行は、日本のみならず世界各国での景気後退を招いているが、今回のサーベイ結果は2020年以降の不透明な経済環境下・コロナ禍での回答となったことが反映された内容となっている。
日本企業の回答で「市場要因による変化の加速」がリスクの1位にランクされたのは、政治的、経済的、技術的な要素を組み合わせた変化による影響を最大のリスクと捉えている企業が多いことが伺える。米中の貿易摩擦やブレグジット後の影響、原油価格等の商品市場の暴落・高騰や半導体不足、DXの推進やAI等を活用した技術革新とそれに付随するデジタル規制等を背景とした市場の変化による現在の不安定な事業環境が要因と考えられ、また、新型コロナウイルスの感染拡大による景気低迷とそれを受けた各国での政治的・経済的な対応も自社事業に大きな影響を与える予測不能なリスクとして考えている企業が多いことも一因と推察する。
また、リスクの2位となった「事業中断」についても、これを引き起こすシナリオとして新型コロナウイルスの感染拡大が考えられる一方、グローバルの回答のトップ10には入っていない「気象・自然災害」(3位)や、「気候変動」(9位)が日本では上位にランクインしていることを考えると、これらがもたらす地震や台風、豪雨・洪水等による「事業中断」を上位のリスクと捉えた、自然災害が多い日本を反映した結果と考えられる。
興味深いのは「サイバー攻撃/情報漏洩」が5位にランクされたことである。「サイバー攻撃/情報漏洩」はグローバルでは1位、アジア太平洋地域でも2位にランクされたが、日本でのランクが比較的低いのは、前述のリスクと比較して大規模な損害となることを想定していない企業が多いことが原因と推察するが、「サイバー攻撃/情報漏洩」に対して何かしらのリスク軽減策を講じていると回答した企業が73%と、グローバルの数値(87%)と比較して低いことは懸念材料である。2020年以降、ハッカーや犯罪者は新型コロナウイルスの流行を利用し、世界各国のあらゆるビジネス分野への攻撃をエスカレートさせてきた。エーオンの「2021年サイバーセキュリティリスクレポート」によると、ランサムウェアによる攻撃件数は2018年の第1四半期から2020年の第4四半期までに400%も増加し、今後もサイバー攻撃はその規模、巧妙さ、頻度ともに増大すると考えられており、今回のサーベイでは「2024年に予想されるトップリスク」でもグローバルで1位にランクされている。日本企業においてもリスク軽減策の実行が急務と考えられる。
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